成果主義賃金が中小企業でうまくいかない理由

今から約20年ほど前であったと思います。
従来の日本型の年功序列賃金から、成果給への移行が盛んになりました。

海外のようにその人が達成した成果に応じで賃金を配分すべきという考えは、増加する団塊世代の賃金を抑えたい経営者の意向と、バブル後に賃金の伸びを抑えられた若年齢層の支持もあり、モチベーションの向上に効果があるとされ、大企業を中心に急速に導入が進みました。

しかし、近年は大手企業の一部にも成果主義を見直す動きが見られ、中小企業での導入は大手企業ほどには進んでいません。

給料を支払って「得るもの」と給料を「支払う理由」が一致していない

お店でパンを買ってお金を払います。
パンに対してお金を払う。お金を払ってパンを得る。

では、経営者はお給料を払うことで何を得るのでしょうか?

成果給は、予め目標を定め、その目標を達成するかどうかで評価が決まり、評価に応じた賃金を支払います。
給料の元手は言うまでもなく会社の利益であり、キャッシュです。

赤字を図にすると下のようになります。これは前提条件として頭に入れておいてください。(キャッシュフローは少し複雑なので赤字の場合をお話します。)
売上-費用=利益 これがマイナスになれば赤字ですね。

では、従業員個人に目を移しましょう。

例1 Aさんの担当している製品①の不良率が高く、その低減をAさんの目標とし、Aさんは不良率を下げました。当然、Aさんの評価は高くなり、高い賃金が支払われるはずです。
しかし、Aさんの活躍に関わらず、会社全体が赤字となる場合もあります。

例2 従業員全員が目標を達成した場合、それでも赤字という場合もありえます。
従業員の働きが決算に反映するのは多くの場合、「営業利益」です。従業員全員が目標を達成したのであるならば、普通に考えると黒字になるとおもいますが、「経常利益」や「当期純利益」の部分で赤字となることもあります。また、黒字でもキャッシュフローとしてマイナスになる場合もあります。例えば、投資の失敗・資金調達の失敗・取引先の予期せぬ倒産による回収不能など。
これらは、役員や管理職の責任である場合はあっても、全従業員の責任とは考えにくいと思います。

これらの例の場合、つまり赤字でも支払うお給料を増やさなければなりませんが、その元手はどうする?という問題になります。

これが、給料の元手と給料を支払う基準が一致していないとはこういう意味です。

お給料を支払うことから得られる対価が必ずしも黒字やキャッシュではないということです。

成果給の場合、従業員の責任(目標)が明確になります。その責任(目標達成)に応じたお給料を(赤字でも)きちんと支払える場合、成果主義賃金は機能しますが、体力が弱い中小企業の場合、それが難しい場合も多いです。

従業員個人が出した成果と支払われる給料が一致しないと、モチベーションは下がります。

年功序列賃金も同じ、ただ・・・

では、年功序列賃金の場合は?

年功序列の場合、「年齢」や「雇用期間」によってお給料が支払われます。
そういう意味では成果給と同じで、お給料を支払うことから得られる対価が必ずしも黒字やキャッシュではありません。

ただ、年功序列の場合、責任の所在が不明確なので、仮に赤字で人件費を抑えなければならない場合でも、「全体責任」として扱われ、不公平感は出にくいのです。

給与体系が単純なために、お給料のカットも行いやすく、将来、黒字になった時にお給料を元に戻すのも容易です。

きっちり目標と成果を管理し、お給料に反映させるわけではない。ある意味どんぶり勘定ですが、曖昧な管理しかできないのに、きっちりとした管理が必要な成果主義賃金を導入すると、不平・不満が発生し、逆効果になるのです。
それなら曖昧な方がマシです。

成果主義賃金を導入するなら

このホームページでも紹介している「デシの理論」では、お給料は「外発的動機づけ」にあたり、自ら働きたいと思う意欲(内発的動機づけ)を無くすものです。
また、「動機づけ・衛生理論」では、「衛生要因」にあたり、無ければ不満であるがあっても満足しないものとされています。
なので、私個人としては、成果主義は、成果を出せば高いお給料がもらえるものであり、モチベーション向上に効果があるのか疑問ではあります。

前述のように、不公平感を抱かせないために、厳格な制度設計と運用が必要になります。
そして、成果主義を導入したなら、たとえ赤字でも成果主義賃金に則ったお給料を支払う覚悟が必要です。
従業員が成果を出しても赤字である。という場合は、経営者の責任と捉えるべきです。

「中小企業の業績は経営者の器と同じ。」という格言?めいた言葉がありますが、赤字の責任を従業員に転嫁するのではなく、従業員個々の出した成果に対して、きちんとお給料を支払う。
それが成果主義を成功させる秘訣です。

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