大企業の春闘は一段落しましたが、中小企業の春闘はまさに今真っ盛り。
昨年あたりから、政府の意向もあり、賃金上昇の流れとなっています。
国の危機ともいえる少子化に歯止めをかけるためにも、子育て世代の賃金上昇は避けて通れません。
大企業で労働組合からの要求に満額回答なんてニュースも流れておりましたが、中小企業はどうでしょうか。
中小企業の賃上げ傾向
日本商工会議所のアンケートでは、23年度に賃上げを実施するとの回答が58.2%に上ったとのこと。
ようやくコロナ禍から脱してきたとはいえ、多くの企業がコロナのダメージを引きずり、エネルギー価格・原材料価格の高騰が中小企業を苦しめているのは明らかであろう状況で、正直、私は全く意外でした。
賃上げの理由として、「従業員のモチベーション」が77.7%、「人材の確保・採用」が55.8%。
人材確保という側面が大きいようです。
業績は良くないが人材確保のために賃金のアップをせざるを得ない。そんな状況です。
モチベーション向上の要因は?
デシの理論というモチベーションに関する理論があります。
金銭等による動機づけ(モチベーションが向上する要因)を「外発的動機づけ」
自らの“やりがい”等による動機づけを「内発的動機づけ」
の2つがあるという理論で、その中に、時に外発的動機づけは、内発的動機づけを阻害してしまうという考えがあります。
それを都合よく解釈し、
「給料が安くても“やりがい”をうまく与えることが出来れば従業員はモチベーションを保つ」、
「“やりがい”が大事なのであって、賃金アップは不要」といった極論で語られることもありました。
一方、詳細な記述は省きますが大企業を中心に役員報酬は増加しています。
その理由は「優秀な人材を確保するため。」特に海外から優秀な“プロ経営者”を招く場合、海外の相場に負けない報酬が必要というわけです。
つまり、役員のモチベーションは報酬が大きなウェイトを占めるということなのでしょう。
役員が高額な報酬が欲しいのであれば、従業員もより高額な報酬を求めるのは当然です。
結局、人材の確保やモチベーションには賃金が大きく影響するのです。これは認めなければなりません。
東京大学教授の本田由紀先生が著書で「やりがい搾取」という言葉を使われました。
企業が労働者の「やりがい」を悪用し、不当に低賃金や長時間労働を強いる行為全般を指しますが、
なかなか賃金が上がらない若年層のサラリーマンを中心に、認知・定着された言葉となっています。
デシの理論を都合よく解釈したモチベーション管理は今後通用しません。
これからのモチベーション管理
物の価値を決めるのは希少性です。需要が供給を上回れば値上がりし、供給が需要を下回れば値下がりします。
少子高齢化が進む日本では労働者は確実に減少します。
労働力の供給が減り、終身雇用が崩壊に向かい、転職に対する心理的なハードルが低くなってきた今の日本では、高い賃金を支払わないと優秀な労働者の確保はできません。
バブル崩壊以降、人余り状態が続いてきた日本では、このようなあたり前のことが忘れられていたのではないでしょうか。
今までの従業員のモチベーション管理は、安い賃金でも従業員が成果を出すためのものだったかもしれません。
しかし、これからのモチベーション管理は、高い給料で雇用している従業員に成果を出してもらい、その成果でさらに高い給料を支払うため。
となっていくでしょう。
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