それでは前回の続きです。
補助金の交付決定が出ても補助金が支払われなかったカラクリと、そうならないための注意点。いよいよ核心部分です。
③補助金の対象事業を行う
補助金申請で認められた設備や備品の購入等を実際に購入します。
ここでも注意することがあります。
一つは補助金の事業期間です。
補助金で言う事業期間とは、世間一般で言う事業期間とは少し意味が違い、設備や備品の発注・納品・代金の支払い等を行う期間のことです。例えば事業期間が4月1日から8月31日までと設定されている補助金で、発注を3月20日にした設備や備品は補助金の対象外となります。同じように代金の支払いや納品が9月1日の設備や備品は対象外となります。
二つめは設備や備品を購入(支払い)する方法です。
設備や備品を現金で購入しますか?銀行振り込みで支払いますか?カードで支払いますか?支払いの一部を貯まったポイントで支払う場合は?代金を支払うのではなく債務と相殺した場合は?
補助金によっては現金での支払いは対象外としている補助金があります。これは不正の防止のためというのが主な理由です。現金支払いの場合は領収書が支払いの根拠となりますが、領収書の偽造が後を絶たないのです。そのため現金払いは対象外としている補助金が増えています。
では、カード払いはどうでしょうか?カードは対象となる補助金と対象とならない補助金がどちらもあり、注意が必要です。また、カードで支払った後、おおよそ一カ月後に金融機関の口座からカードで支払った代金が引き落とされますが、その一か月の間に事業期間を過ぎていれば対象外となる場合もあります。
ポイントでの支払いは値引きと同じですので対象外です。債務との相殺も対象外です。
最近はネットでの取引が増え、画面上ですべてが完了したり、従来の取引とは違った形が増えています。補助金の対象となるか注意が必要です。
キャッシュレスやネット取引などが急速に普及している中で、補助金の制度設計自体が古いという批判もありますが、やはり税金が原資であり不正や詐欺を見逃すわけにはいかないので、確実に証拠が残る取引形態しか認められないという事務局側の考えも当然です。
面倒くさくても不便でも、補助金で欲しいものを購入する以上、補助金のルール・制度に合わせた取引形態で購入する必要があります。
④実績報告(完了報告)を提出する
交付決定通知を受けた事業が完了(設備や備品を購入)したら、それを報告する必要があります。多くの場合、実績報告書という様式が準備されているので、記入して提出します。
それと同時に経費を支払った(設備や備品を購入した)証拠となる書類を提出します。この書類は発注書・請求書・納品書や振込明細・領収書、購入した設備や備品の写真等です。
つまり、きちんと申請書通りに事業を行ったという証拠を示す必要があるのです。
証拠を示すことが出来ないと補助金が減額される場合があります。
以下がその例です。
例 申請時に600万円の設備を購入するとして交付決定を受けても、実際には購入先が値引きしてくれて570万円で購入した場合。その場合は交付決定通知を400万円(補助率2/3の場合)で受けていても、補助金は570万円の2/3で380万円となります。
例 証拠書類として領収書が必要であるが紛失してしまった場合。
例 証拠書類は揃っているが、事業期間外の日付であった場合。
例 申請書で申請した設備が売り切れていて購入できなかったため、欲しかった別の設備を購入した場合。
最近はネットの画面上で全ての取引が完了するなど、従来の補助金制度では想定されていなかった取引形態も増えています。思わぬところで対象外とならないよう注意が必要です。
上記の例のような場合でも、他の書類で証拠書類を代替できる場合とか、実質的に条件を満たせる場合等には救済措置が取られる場合もあります。
事務局に相談すると良いでしょう。(相談してダメでもクレーマーみたいになるのはやめましょうね。)
⑤補助金の確定通知を受け取る
提出した実績報告や証拠資料が精査され、最終的に認められた補助金の金額が通知されます。
ここでようやく受け取れる補助金の金額が決まるのです。
⑥補助金の請求書を提出する
決められた様式で補助金の請求書を提出します。補助金の支払いは金融機関への振り込みで行われるので、振込先を指定します。
振込先は交付決定を受けた事業者の口座でなければなりません。法人が社長個人の口座を指定するとか、負債がある企業の口座を指定するということは出来ません。
また、補助金の請求にも期限があり、期限を過ぎると支払いを受けることができなくなります。
⑦補助金を受け取る
お疲れさまでした!!
ようやく補助金を受け取ることが出来ました。
しかしこれで安心してはいけません。
多くの場合、受取った補助金に関する資料を一定期間残しておく必要があるというルールが決められています。
なぜかというと、後に調査が入ることがあるのです。
つまり、それだけ補助金の不正受給が多いという事です。当然不正がバレたら補助金を返金しなくてはなりませんし、悪質と判断されれば刑事告発されたりします。
如何でしたか?
補助金の交付決定通知を受けても、補助金が支払われないことがある理由がわかって頂けたでしょうか。
交付決定を受けたにもかかわらず補助金が支払われないというトラブル。
補助金の事務局はこのトラブルとなった補助金に限り、今までの補助金と違う対応をしているという訳ではないと思います。
このコロナ禍で応募が殺到し、補助金に不慣れな申請者に対するフォローが行き届かなかった、持続化給付金のように交付決定を受ければ補助金が支払われると申請者が誤解した、応募要領を事前に読んでおかなかったというのが主な原因ではないかと推察します。
では補助金の事務局に責任が無いかというと、「交付決定通知」に代表されるようにお役所の専門用語が誤解を招きますし、そもそも制度が複雑で分かりにくいという根本的な問題もあると思います。
分かりやすく丁寧な説明が求められますし、応募要領を読みやすく分かりやすくする等の工夫が求められます。私のように何度も補助金申請のお手伝いをしていても、わかりにくいと思うことは多々あります。その辺は補助金の事務局に強くお願いしたいです。
少し話は逸れますが・・・
なぜ、皆が支払っている税金を一部の事業者に補助金として支払われるのでしょうか?
受けた補助金で事業を発展させ、雇用を増やしたり納税という形で還元したり、社会全体に貢献する。これが本来、補助金を受ける事業者に期待されていることです。
このコロナ禍では事業者を助けるためという側面が強調されていますが、補助金は本来困っている事業者を助けるものではないのです。
社会の発展に貢献してくれるであろう事業を手助けするものです。だから事業内容を審査をして採択・不採択に選別されるのです。
補助金を正しく受け取り、事業を発展させ、社会に貢献しましょう!
この記事へのコメントはありません。