経営のサイレントキラー

サイレントキラーとは、高血圧、脂質異常症、糖尿病など、いわゆる生活習慣病のことです。
気づかないうちに進行し、致命的な病気を発生させるため、サイレントキラー:「沈黙の殺人者」と呼ばれます。

経営にもサイレントキラーがあります。
生活習慣病と同じように気づかないうちに進行し、致命的な病気を発生させる。

実際の生活習慣病の場合は、自覚症状が出ると病院に行きますが、経営の場合は自覚症状が無いままに倒産という最悪の事態に陥る可能性もあります。

倒産後も「市場の状況が悪化したから。」「取引先の業績が悪化したから。」と、本当の原因に気づかない。

癌や脳卒中の原因が生活習慣にあるように、経営が傾く原因が「組織・人」の問題であることがあります。

損失が固定化する

固定費はなるべく抑えたいですよね。
経費でも嫌なのに、損失が固定化されるって、どういうことでしょうか?

例えば、従業員のモチベーションが上がらず、それぞれの従業員の生産性が同業他社より1%低いとします。
従業員が100人の企業なら、計算上従業員が1人いないのと同じです。
でも、どうですか?従業員の生産性が1%低いことに誰が気づくでしょうか?

業務・作業方法は以前からの方法を踏襲しています。
良い言い方をすれば「伝統を守る。」ですが、悪い言い方をすれば「進歩が無い。」とも言えます。人は変化を嫌うものです。今現在問題が無い方法を変える必要性も感じません。でも、進歩する必要があるのは明白ですよね。
同業他社は少しずつでも新しい業務・作業方法に改善されているかもしれません。その結果、利益率は上がり、コストダウンは進み、品質は向上しているかもしれません。

市場に特定製品のブームが来る兆しがある。お客様の嗜好が変わってきているようだ。
仕入れ、販売の計画を修正する必要性があります。製造業なら生産ラインの変更も行わなければなりません。
現場が察知したこのような市場の変化を、迅速に経営トップにまで届け、経営トップの意思決定につなげることができるか?
ここには、①現場の営業マンが変化の兆しをキャッチするというプロセスと、②しかるべき責任者を通じ経営トップにまで情報を伝えるというプロセス、③経営トップが意思決定するというプロセスがあります。3つのプロセスが遅れると、同業他社に後れを取る可能性もあります。

工場のレイアウトが適切でなく、無駄が発生しているとします。
レイアウトはそうそう簡単に変更できませんし、毎日その工場で働いているとそのレイアウトが当たり前となり、問題があるということにさえ思い至りません。
でも、毎日その工場で作業をするので、毎日無駄が発生しているということになります。

これらの例にはそれぞれ問題がありますが、経営トップがその問題に気づくことができますか? よっぽど現場に関心があり観察している経営トップなら気づくかもしれません。

でも、ちょっと難しいですよね。

「営業や製造の責任者が気づいて改善するから大丈夫。」でしょうか?
残念ながらそうではないことが多いのです。
なぜなら、(当時は先進的であったが)現在の作業方法を作った、もしくは、昔からの作業方法を部下に引き継いだのは、その責任者自身かもしれないのです。
だから、気づかない。むしろ、昔からの方法を変えることに抵抗があるかもしれない。

サイレントキラーを撲滅するには

サイレントキラーを撲滅するためには、まず、現状に問題意識を持ち、問題を探し出し、もっと良い方法は無いか、変化の兆候はないか、センサーを張り巡らす必要があります。そのセンサーは多ければ多いほど良いですね。

つまり、従業員全員にセンサーの役割を担ってもらえばよいのです。
センサーが問題や変化を察知すれば、その問題や変化の大きさにより、現場レベル、管理職レベル、経営レベルで対処することができます。

経営のサイレントキラーは、気が付かないうちに少しずつ大きくなり、体力を奪っているのかもしれません。
致命的な病気を生み出す前に、自覚症状が出ない前に、対処したいものです。

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